小山昇氏の銀行対策はおかしい!①
小山昇氏著「1%の社長しか知らない 銀行とお金の話し」
がよく売れています。
しかし、同氏の持論は危険です。
“銀行からは借りれるだけ借りておきなさい”
“借金をして常に潤沢な現預金を持ちなさい”
この論理は、
“とにかくお金があれば安心できる”
という、財務を勘違いしている中小企業の社長には刺さるでしょう。
しかしこの考え方は、経営における明らかなミスリードなのです。
①“金利は保険料”“融資は保険受取金”とは、返す気がないのか
小山昇氏は書籍で銀行金利と融資について、こう書いています。
「金融機関に支払う利息は、保険会社に払う保険料と同じ。」
「金融機関から受け取る借入金は、保険会社から受け取る保険金と同じ。」
つまり、有事の際に保険金と同様の融資をさらに受けるために、
日頃から銀行借入をして金利を払っておきなさい、というのです。
月商の10ケ月から1年分くらいは借りてでも持っておきなさい、と。
そのおかげで、わが社はコロナ化にすぐに追加融資を受けて、
見事に乗り越えることができた、とも書いてあります。
コロナ禍の売上減で融資をすぐに受けたのは、
それまで借入金をたくさんしていた会社ばかりではありません。
政府主導のもと、すべての金融機関が一斉に融資を緩和しました。
借入金が多い会社を優先したわけでもありません。
政府の方針で各金融機関が動いただけです。
当然、
適度な借金の会社でサービス業、飲食業をしている会社にも、
素早くコロナ融資のお金が入ったのです。
もっといえば、無借金の会社にもです。
何も日頃の借入金が多いから、
追加融資をすぐに受けれたのではないのです。
そもそも、
「金融機関から受け取る借入金は、保険会社から受け取る保険金と同じ。」
という考え方がひどいです。
受取保険金は返済する必要がありません。しかし、
銀行融資は返済を伴います。
融資のお金が受取保険金と同じ、というのは、
返す気がないとしか、思えないのです。
ずっと借りっぱなしでいい、という考え方です。
銀行は、安定経営されている会社には、融資をし続けるでしょう。
銀行に取ったら一番助かるお客さんだからです。
しかし、そうではなくなった会社、例えばビッグモーターは、
多額の融資があっても、追加融資を断わられました。
安定経営の道が消えたからです。同社は小山氏の指導先でした。
結局、真の経営危機に陥った時に、
金利は保険料にもならないし、ましてや、
小山氏がいうところの受取保険金となる追加融資など、
ありえないのです。
それに今後、金利が上がってきたら、
“金利は保険料と同じ”などと言っていられません。
デフレでカネ余りの低金利だから、そう言えるだけなのです。
絶えず無借金であることが正しいとは、私たちも考えません。
経営に必要なお金は銀行から借りればいいし、その時には
好条件で調達できるよう財務体質を強くしておけばよいのです。
必要もないのに常に多額の借入金をして、金利を払い続けるなど、
銀行を喜ばせるだけです。
「銀行支店長がこの本の内容を認めた」
と書かれています。広告にも出ています。
あたりまえです。
この本のとおりに経営者が動いたら、一番儲かるのは銀行だからです。
続く…。
(古山喜章)
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ちなみにビッグモーター社は、去年の騒動でも武蔵野会員はすぐにはクビにならずに9/30まで会員だったそうですw
投稿: とおりすがりのオッサン | 2024年3月15日 (金) 13時07分