小山昇氏の銀行対策はおかしい!(13)
小山昇氏著「1%の社長しか知らない 銀行とお金の話し」
がよく売れています。
しかし、同氏の持論は危険です。
“銀行からは借りれるだけ借りておきなさい”
“借金をして常に潤沢な現預金を持ちなさい”
この論理は、
“とにかくお金があれば安心できる”
という、財務を勘違いしている中小企業の社長には刺さるでしょう。
しかしこの考え方は、経営における明らかなミスリードなのです。
(13)「実質無借金経営」など目指すな
この本には、次のように書いてあります。
“「実質無借金経営」を目指しなさい。
それは、返済しようと思えばいつでも返済できる状態。
現預金を増やして「緊急支払い能力」を高めておく。
目安は月商の3倍以上の現金。”
要は、いついかなるときも最大限の借入金をして、
現金をたくさん抱えておきなさい、と言うのです。
「返そうと思えばいつでも全部返せます。うちは実質無借金です。」
という中小企業の社長は確かにいます。
しかし、常に借入金で現金を抱えている中小企業の社長が、
一気に全部返したことを、見たことも聞いたこともありません。
そのような考えの人に、全部返す、などという発想はないのです。
借金をしてまで現金を抱えることへの、言い訳にすぎません。
こんなことを勧める小山氏は、本当の資金繰りの怖さを知らないのです。
借りられるだけ借りていた状態で、マサカの坂がきたらどうなるのか。
大震災がきた、〇〇ショックがきた、大口の取引先が倒産した、等。
売上高は激減します。
例え現金があっても、しょせんは借金なので、返済は発生し続けます。
給料や家賃などの固定費だけでも厳しいのに、そこへ返済金が加わります。
資金繰りはみるみるうちに厳しくなります。
あるいは、在庫がたくさん必要な商売や、
先にお金を支払って仕入れる海外貿易が必要な商売の場合も危険です。
要は、回収が遅い商売です。
「実質無借金」だから大丈夫、とたくさん持っていたはずの現金も、
気が付けば大量の在庫や海外仕入れの支払いに食われていきます。
お金があれば使ってしまうのが、中小企業の経営者なのです。
そこにマサカの坂が来たら、資金繰りは一気に悪化します。
「資金繰りが厳しくなるのは、借入金がなくても同じじゃないですか。」
という人がいます。全然違います。
まず、借入金がないので、すぐさまの返済金は不要です。
それに、財務体質が良ければ、すぐに取引銀行から資金調達できます。
しかもその時に返済条件を決めるので、状況を理解してもらいやすいです。
当座貸越契約があれば、なおのこと早く調達できます。
一方で、常日頃から限界まで借りている会社にマサカの坂が発生して、
銀行が新たに貸すことは、絶対にありません。
借金過多の社長はそれがわかると、これ以上は借りられない、という恐怖と、
お金がどんどん減ってゆく、という恐怖のダブルパンチです。
寝ても覚めても、資金繰りのことしか考えられなくなります。
精神的にどんどん追い込まれ、身体に異変が生じ始めます
血のションベンが出る。髪の毛が一気に白くなる。
円形脱毛症が起こる。顔面神経痛になる。
等など、さまざまな症状が表に出てきます。命がどんどん縮むのです。
経営危機に陥っても、無借金であれば、
資金調達の手立ては残されています。
それだけで、精神的なダメージはかなり浅くなります。
命が一気に縮むほどの異変までは、体に生じません。
それくらいの違いがあるのです。
それに銀行は、全額回収できないとわかると、どんな手を使ってでも、
少しでも多く回収しようとします。
その怖さについても、次回に書かせていただきます。
(古山喜章)
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おっしゃる通りです。
私も商売の調子がチョット悪くても、借金がないので、いつもニコニコしてられます。
資金繰りが自転車操業の会社の社長には、どこか陰があるように思います。
先日、インドネシアのホテルの日本人フロントマン(男性)から、青山さんはいつもニコニコして、悩みが無さそうでいいですね!って言われました。(イヤミか!と思いましたが。。)
私はその人に、言ってやりました。
笑顔か?笑顔で無い?かは、借金まみれか否かの違いですよ、って。
やはり、無借金の方が、心に大きなゆとりを持てていいです。実感しています。井上先生の無借金の勧めに感謝です。
投稿: アオヤマモトヒロ | 2024年4月 3日 (水) 14時31分