経営者を悩ませる専門家たち➂
経営には意思決定が必要です。
自分自身で判断がしづらい時には、
周りの専門家の声にも耳を傾けます。
しかし、聞けば聞くほど悩みが深くなってゆく、
というケースが往々にしてあるのです。
しかも、その悩みの原因を聞いてゆくと、
専門家の経験不足、知識不足、ということがあるのです。
➂種類株式に反対する税理士
相続対策として、種類株式を活用することがあります。
現社長の株式の一部を種類株式に変更して、
一部の非同族従業員へ、譲渡するのです。
議決権は無く、優先配当、取得条項付き、の種類株式です。
経営参画意識を高めるために、行います。
いくら株価が高い株式であっても、
非同族の従業員へ譲渡するのは額面で可能です。
それに議決権が無い種類株式なので、支配権への影響はありません。
取得条項が付いているので、その従業員が退職した時や死亡時は、
会社が買い取る形となります。
その時、会社が買い取る価額は、非同族者からなので、
額面で買い取ることが可能です。
ここで反対するのが、その会社の顧問税理士です。
特に、会社が買い取る際の価額について、異議申し立てをしてきます。
「非同族からとはいえ、会社が額面で買い取ると、
他の株主の株式価値が上がり、みなし贈与課税が課せられる!」
ほぼ間違いなく、この指摘です。
しかし、そんなことを言いだしたら、
世の中、自己株式を買い取る例など、上場・非上場に関わらず、
いくらでもあります。
それらの全てにおいて、みなし贈与が課せられる、
ということになりますが、実際にはそんなことはありません。
「いや、みなし贈与が課せられた判例がある!」
と言われてその判例を見ると、まったく同じケースではなく、
「いや、これはダメでしょう。」
と私でも思う事例なのです。
種類株式は会社法で管轄は法務省です。
税金は税法で管轄は財務省です。
そもそも法律の管轄が異なります。
当然、税理士は会社法に詳しいわけではありません。
すべて税法の頭で国家の視点にたって考えようとします。
多くの社長も、税理士から反対されると、
大丈夫かな、と不安になるので、また説得します。
社長、税理士を含めての説得の場を、何度も執り行います。
そうしてようやく、種類株式の実行に移せる、
ということが度々あるのです。
税の専門家だからと言って、
あらゆるケースの税金に精通しているわけではありません。
特に会社法を活用する事業承継対策においては、
税理士に確認しても、不安をあおるアドバイスが多く、
社長の意思決定が鈍くなってしまうのです。
税理士は会社法について詳しいわけではない、
ということを前提に、税理士の言葉を受け止めてほしいのです。
(古山喜章)
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