銀行交渉に強くなりなさい④
“銀行が金利を上げる交渉に来ました!”
というお声を聞く機会が最近増えました。
このような時こそ落ち着いて、
このブログやICOの書籍・セミナーで学んだことを思い出し、
銀行の言いなりにならない交渉をしてほしいのです。
④事業承継の提案が増えています
取引先の会社に、事業承継の課題があるかどうか、
銀行はつかんでいます。
銀行は決算書一式を受け取ると、その中の別表2を見ます。
そこには、ある程度の株主構成が記されています。
それを見て、
後継者が株式をまだほとんど持っていない、などと把握します。
だから、銀行員が決算書一式を取引先から受け取ることは、
その銀行員のお手柄として、人事評価の対象になるのです。
それくらい、
銀行にとって決算書一式は、提案の宝庫なのです。
ある会社で先代の退職金を8億円出そうとしました。
その会社は剰余金が8億円でした。
退職金を8億円出せば、株価は劇的に下がります。
後継者が先代から株式を買う経済負担は大きく下がります。
8億円のうち、約6億円は銀行借入が必要でした。
するとその会社の取引銀行の支店長から提案がありました。
「いまの財務体質で8億円もの退職金を出すと、
剰余金がなくなって、財務体質が悪化します。
それに、8億円もの退職金は否認される可能性があります。
3億円程度なら否認されることはありません。」
と言ってきたのです。
「3億円の退職金だと、株価があまり下がらないじゃないですか。」
と、後継者は言いました。銀行支店長は、
「株価が下がらない分は、私どもがお貸しさせていただきます。
高すぎる退職金を出して否認されるよりも、安心ですよ。
それに、剰余金がなくなると、融資の条件も悪くなりますよ。」
と言ってきたのです。
結局、銀行は3億円の退職金で自分たちの融資を確保しつつ、
退職金の提案で、コンサルティング料を受け取りたいのです。
私は言いました。
「その支店長には、
8億円で否認されて、3億円なら否認されないのはなぜですか。
単に金額の問題ですか。
うちの父親は創業者で、40年の経営歴です。
一般的な計算式で算出しても、退職金は8億円超になりますよ、
と言ってみてください。」
後継者は支店長にそのとおり伝えました。
すると、
「わかりました。
そこまでおっしゃるのなら、どうぞそのようにしてください。」
と言ってきたのです。
銀行は利ザヤで稼げないので、他の提案で稼ぐことに注力しています。
その最たるものが、事業承継です。
株価が高いほど、大きな金額の提案に繋がるからです。
それが最近、ますます増えている、と感じています。
銀行の提案には、もれなく銀行借入が付いてきます。
そのような提案に流されることなく、
自分の判断で最適策を選択できるよう、知識を蓄えておいてほしいのです。
(古山喜章)
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