経営者を悩ませる専門家たち①
経営には意思決定が必要です。
自分自身で判断がしづらい時には、
周りの専門家の声にも耳を傾けます。
しかし、聞けば聞くほど悩みが深くなってゆく、
というケースが往々にしてあるのです。
しかも、その悩みの原因を聞いてゆくと、
専門家の経験不足、知識不足、ということがあるのです。
①高額退職金に反対する税理士
長い経営のなかで純資産の剰余金が大きくなり、
気付けば自社の株価がとんでもない価格になっていた、
どうにかして株価を下げなければ、
という相談がICOには寄せられます。
株価が高くなりすぎて、
後継者の経済的負担があまりにも大きくなっているのです。
そのような場合、ICOでは対策のひとつとして、
現社長や会長に、高額の退職金を支給することを提案します。
5億円、10億円、20億円以上と、
摘みあがった純資産額をもとに、支給額の目安を立てます。
併せて、現社長・会長の月額報酬や在籍年数を調べます。
高額退職金を支給すれば、その支給した年度は大赤字になります。
そうなると、その赤字の分、純資産は減ります。
要は、高額退職金を支給することで、
膨らんだ純資産を一気に圧縮し、株価を下げるのです。
そこで経営者は、次の疑問に差し掛かります。
「先生、うちには5億もの退職金を払う現預金はありませんよ。」
「何を言っているんですか。社長の会社の財務状況なら、
5億円くらい、銀行がすぐにでも貸しますよ。」
とのやりとりの末、銀行から融資を受けて高額退職金を支給する、
という意思決定が行われます。
そこで反対する筆頭が、顧問税理士です。
顧問税理士に退職金の事を伝えた経営者が、不安げに相談してきます。
「先生、顧問税理士に5億円の退職金の件を伝えたら、
そんな高い退職金は聞いたことがない、!
それは絶対に税務調査で否認される!
こんな大きな赤字にしたら銀行がなんというか!
2億円くらいなら問題ないだろう、
と言うんですが、どうなんでしょうか?」
金額の程度はさまざまですが、
このようなパターンの経営者のお悩みが、本当に多いのです。
しかし、退職金は金額が大きい・小さいの問題ではないのです。
その金額に見合う、功績があったのかどうか、が最大の要点です。
5億円がダメで2億円ならOK、というものではないのです。
併せて、月額報酬と取締役としての在籍年数が、
退職金の額の算定に足りているか、ということも大きな要素となります。
結局、このような意義が顧問税理士から生じた場合、
その税理士にも面談をし、説明してゆきます。
すると、ほとんどの場合において、
その税理士は5億円や10億円の退職金を経験したこともなければ、
聞いたこともない、というだけなのです。
経験がないから、高額すぎてダメだ、否認される、と思い込んでいるのです。
そんなことで経営者は悩まされているのです。
それでも、経営者は税理士という専門家の言葉を大いに意識します。
“税理士がそう言うのなら、そうなのではないだろうか”
と思い悩んでしまうのです。しかし、専門家といえども、
すべてに精通しているわけではないのです。
経験したこのないことも多いのです。しかしながら、
“経験したことがないからわからない。”
と素直に答える税理士が少ないのも事実です。
だから、自分の経験の範囲に事を収めようとするのです。
そのような税理士がいたら、経営者は悩まされるばかりなのです。
(古山喜章)
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高額退職金を受け取った後の相続税対策はどうしたらいいのでしょう。
投稿: y | 2024年6月24日 (月) 11時58分
Y様、コメントをありがとうございます。次回のテーマで反映させていただきます。よろしくお願いいたします。
投稿: 古山喜章 | 2024年6月25日 (火) 07時31分