その固定資産、稼いでいますか⑤
含み損のある土地や建物があれば、
「別会社に売却して特別損失を計上しなさい!」
と言い続けています。
固定資産から外すのです。
しかし、外したいのは土地や建物だけではありません。
固定資産は本来、長期にわたって稼いでくれる資産です。
なのに、稼いでいない固定資産もあるのです。
⑤長期貸付金
決算書を拝見すると、固定資産のなかに、
「長期貸付金」の記載を見かけることがあります。
内容を確認すると、
“社長への貸付金です。”という場合があります。
しかも、「貸付金」なのに、
5年前から残高が変わっていない、あるいは、
残高がじわじわ増えていたり、するのです。
まったく返済が進んでいないのです。
この場合、金融庁の指導マニュアルからみれば、
早期返済の見込みがない貸付金とみなしなさい、
となります。
で、そのような貸付金は自己資本から減額しなさい、
となるのです。
「短期貸付金」「経営者貸付金」などで記載されている場合も、
銀行の見かたは同じです。
金融庁が銀行に対して発行する、
「金融検査マニュアル」の「別冊(中小企業融資編)」には、
銀行が中小企業に融資をする際の見かた・考えかたが、
細かく書かれています。
(「金融検査マニュアル」は、今も運用されています。)
具体的に、最初に挙げられている検証ポイントは、
「代表者等との一体性」をよく見なさい、ということです。
さらにその筆頭には、
「実態的な財務内容を見なさい」となっています。
具体的に記載されているのが、
「経営者への貸付金は自己資本から減額する」
というものです。
逆の事例で言えば、経営者が引き受ける「少人数私募債」は、
出資性が高いとして、資本性借入金とみなされます。
自己資本とみなされるのです。
だから、「貸付金」という勘定科目を、
キレイに整理しておいてほしいのです。
本人から返してもらう、役員報酬を減額する、
退職金で相殺する等、方法はいくつかあります。
銀行による評価では、貸付金がある分、自己資本が減額されます。
自己資本比率が悪化し、ギアリング比率が悪化し、
長期固定適合比率も悪化します。
これらの経営指標は格付け(スコアリング)の評価項目です。
“銀行交渉をして金利を下げたい!”
“借入の条件を改善したい!”という前に、
自社の固定資産の中身を整理し、磨いておいてほしいのです。
(古山喜章)
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