その固定資産、稼いでいますか➂
含み損のある土地や建物があれば、
「別会社に売却して特別損失を計上しなさい!」
と言い続けています。
固定資産から外すのです。
しかし、外したいのは土地や建物だけではありません。
固定資産は本来、長期にわたって稼いでくれる資産です。
なのに、稼いでいない固定資産もあるのです。
➂赤字会社の株式
ある会社の貸借対照表を拝見すると、
有価証券が約1億円ありました。
「これ、何の株ですか?」とお聞きしました。
すると、その会社の社長は言いました。
「言いにくいのですが、
あるスタートアップ会社の株式なんです。
7年ほど前に投資しました。ところが全然ダメで…。」
儲け話にのって、本業とは無関係の会社へ投資していたのです。
その投資先の決算資料を見せてもらうと、
一度も黒字化しておらず、純資産がマイナスの債務超過です。
集めた出資金もそろそろ底をつきそうな状態でした。
「この会社、今も存在はしているんですか?」
と社長に聞きました。
「存在はしていますが、事業としてはほぼ動いていないみたいです。」
「そうですか。じゃあその株式、売ってしまいましょう。」
「えっ、売れるんですか?うちの別会社へ売ればいいんですよ。」
となり、別会社へ売却することで進めたのです。
株式を売却するには、
該当の会社へ株式譲渡承認請求を郵送で送ります。
『保有している御社の普通株式○○株を、下記の者に譲渡しますので、
承認をお願いします』といった内容です。
会社側は、2週間以内に返事をしなければ、承認したこととなります。
赤字で事業がほぼ停止した会社なので、承認します、
との返事がきました。これで売却可能となります。
別会社へ株式を譲渡する価格は、1株1円で処理しました。
債務超過が続いている会社で、含み益のある資産もありません。
まともに評価すれば、その株価はむしろマイナスです。
マイナスでは売れないので、1円なのです。
1株1円で別会社へ譲渡することで、
ほぼ1億円の売却損が生まれました。総資産も縮みました。
その会社の経常利益はその年度、約2億円でした。
そこに約1億円の売却損を特別損失で計上したのです。
その結果、税引き前利益は1億円です。
課税対象利益を半分にできたのです。
「まさかこんなことができるとは思ってませんでした。」
とは、その社長の言葉です。
この事例と同じような株式があるのなら、
会社法に基づく手続きを進めて、別会社へ売却すればいいのです。
ただし、グループ法人税制にかからないよう、
株主構成が同族100%でないかどうか、配慮が必要になります。
個人が買うなら、グループ法人税制は関係ありません。
何事も、対策はあるものです。
放置せずに、しかるべき相手に相談すればよいのです。
(古山喜章)
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