損益分岐点売上高をどう見るか④
損益分岐点売上高は、損も益もない、
収支トントンの状態です。その計算式は、
固定費 ÷ 限界利益率 とされています。
しかし時折、次のようなお声を聞くのです。
「これで計算しても、その売上高ではお金が足らない」
「キャッシュベースで見たら、ちょっと違うように思います」
そうです。この計算式は、損益計算書の営業利益が
ゼロになる売上高を計算しているだけです。
実際の資金繰りとは、肌感覚が異なるのです。
④製造原価報告書があるとわかりづらい
損益分岐点売上高を計算する際、
損益計算書に製造原価報告書があると、ちょっと計算が面倒です。
製造原価報告書は、
損益計算書の原価部分に、含まれています。
特にメーカーの決算書で見かけることが多いです。
その場合、売上高から製造原価を差し引いて、
売上総利益となっています。
製造原価報告書がなければ、
損益計算書の売上総利益=限界利益として、
固定費÷限界利益率 で計算すればいいです。
固定費は、販売管理費です。
しかし、製造原価報告書があるとそこには、
人件費や消耗品、減価償却費など、原価以外の費用が含まれています。
製造部門での原材料以外の費用、が含まれているのです。
原価とそれ以外の費用が混在しているのです。
限界利益というのは、
売上高から、単純に原価を差し引いた金額です。
原価は、売上が増えれば同じように増える、いわゆる変動費です。
製造原価報告書にある、原材料費や外注費など、
売上高の増加に比例して増える費用です。
製造原価報告書にある、人件費、消耗品費、減価償却費、
旅費交通費など、原価以外の費用は、
販売管理費にプラスして、固定費として計算するのです。
そうしないと、冒頭の計算式で計算しても、
なんだかしっくりこない数字になってしまうのです。
結局、製造原価報告書があると、限界利益がわかりづらいのです。
そのため、損益計算書から製造原価報告書を外して、
通常の原価と販売管理費のみにしている会社もあります。
中小企業の場合、製造原価報告書は、なくても構わないのです。
損益分岐点売上高は、大切な経営指標です。しかし、
損益計算書に製造原価報告書があると、計算しづらいのです。
「うちの決算書には製造原価報告書がある。」というのなら、
限界利益がわかりやすい損益計算書に変えることを、
検討してほしいのです。
(古山喜章)
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