折れた宝刀④
株式評価という場面で、
税務当局の“伝家の宝刀”が抜かれたものの、
結局、納税者(相続人)の主張が認められ、当局は敗訴した、
という事案がありました。
改めて、この話のポイントですが、
・オーナーが生前のうちから、M&Aの話が進められていた
・そのさなかに、オーナーが亡くなった
・なくなってすぐにM&A契約が成立した
・オーナーの相続税を計算するときと、M&Aで売ったときの
1株あたりの金額が10倍以上の開きがあった
・オーナーの家族は、税務署が定めたルールにしたがって、
株式を評価していた
・ただし、国税当局は、「たとえルール通りに評価していたとしても、
実際は、相続税の申告をしたすぐ後に、10倍以上の価格で
売却しているから、それは、おかしい」として、否認した
ということです。
結果的に、この裁判は、納税者(相続人)が勝ったわけですが、
この伝家の宝刀を使って国税当局が勝つには、いってみれば、
納税者(相続人)側が「税金逃れをしようとしていた」
と認められなければならないのです。
その点、裁判所は、そういった事実が“ない”と判断したわけです。
そもそも、M&Aの場面においては、
高度な経営判断や、売手買手の交渉の結果で、
株式の売却代金が決定されるということで、
契約で決定した売却代金=絶対的な評価額
とは限らないと判断しています。
要するに、買う相手が変われば、
売買代金も当然変わってくるでしょう、
ということです。
そして、もう一つ、裁判所が判断したポイントがありました。
(福岡雄吉郎)
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