経営環境が大きく変わり始めた一年でした➂
2024年度も、間もなく終わります。早いです。
しかしこの一年は、
これまでにはなかった大きな経営環境の変化が、
いくつもありました。
それを振り返りつつ、
今後の経営に生かしていただければ幸いです。
➂持ち合い株式の解消
今年度、上場会社による持ち合い株式の解消が
急速に進みました。
持ち合い株式は、
利害関係者同士がお互いの株式を保有することで、
敵対する株主から防衛しあう、
という目的で日本に根付いていた習慣です。
それが一気に解消されていったのです。
持ち合い株式は、有価証券として、
貸借対照表の無形固定資産での計上となります。
しかし、海外の投資家からすれば、
「この資産はなんだ!
資産は稼ぐためのものなのに、大したリターンもないじゃないか。
どうしてこんな株式資産を長期間も持ち続けているんだ!
現金に換えて設備投資に回せ!」
等となったのです。
持ち合い株式も、
世界標準(グローバルスタンダード)からみれば、
理解されがたい日本独自の習慣だったのです。
それが今年、金融庁からの指導もあり、
一気に是正されていったのです。
持ち合い株式の解消だけではなく、
上場会社の下請けとなる中小企業が半ば強引に
買わされていた株式も、
売りつけた上場会社による買い戻しが進みました。
下請側にすればいわゆる、政策保有株式です。
「仕事をもらうためには、この株式が必要です。」
などと言われていたのです。
「それが買い戻されるとは!」
と、多くの下請け会社が驚きの声をあげました。
これは、買い戻す上場会社の自己株式となります。
自己株式は、貸借対照表の純資産でマイナス計上となります。
純資産が自己株式の分、縮みます。
そうなれば、自己株式に対する経常利益となる、
ROE(自己資本利益率)は上がります。
言い方を変えれば、資本効率が上がった、ということになります。
都合のいい方便ではないかとも思うのですが、
数字上は確かにそう言えるのです。
持ち合い株式も、制作保有株式も、
いわば情的な考えにもとづく悪しき習慣による経営資産でした。
しかし本来、経営資産には情を持ち込む必要がないのです。
それがなくなり、経営に必要な資産だけを持つべき、
ということが一気に形に現れた一年だったのです。
これを機に、
不要な資産や稼がない資産を持つことは避けるべき、
と言う方向に、経営は進むと思われます。
しかし、中小企業こそ、まだまだそのような資産が居座っています。
上場会社だけの出来事とせず、
自社にもそのような資産がないか再確認し、
不要な資産の削減に取り組んでほしいのです。
(古山喜章)
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