少人数私募債を上手に使いなさい⑤
中小企業の資金調達は、銀行借入だけではありません。
「少人数私募債」という方法もあるのです。
会社が発行する、社債の一種です。
経営者や身内の者がその社債を引き受け、会社にお金を貸すのです。
少人数(49人以下)を対象に発行するので、
「少人数私募債」と言われています。
⑤返済を任意に決めれる
少人数私募債は、発行して1年間を経過したら、
その一部を返済することができます。
全部を返すことも可能ですが、
おそらくそこまでのキャッシュは貯まらないと思います。
少人数私募債は、単位が1口です。
1口1000万円を20口発行して、
総額で2億円の少人数私募債、といった感じです。
そのうち、発行から1年間経過後に、
発行会社の現預金に若干余裕があるのなら、
「3口3000万円を返済しておこうか。」
と、資金状況に応じて任意に決めれるのです。
「その場合に、何か手続きとかいりますか?」
と聞かれます。
返済する会社(少人数私募債を発行している会社)で、
取締役会の議事録を残す必要があります。
議案は、
〈少人数私募債 一部償還の件〉となります。
その文言は、
“議長より、少人数私募債の引受人である○○○○から、
3口(総額○○○○円)を償還してほしい旨の依頼が
あったことが述べられた。協議の結果、満場一致で承認された。”
といった内容でOKです。
その後もたびたび、同様に一部返済があるのなら、
この議事録を使いまわし、
取締役会の日付と口数・金額を変更すればよいのです。
これが、返済時の証拠書類(エビデンス)となります。
銀行引き受けの社債では、このようにはいきません。
〇カ月ごとの一部返済、
〇年後に一括償還など、契約時の取り決めに従い、
厳密に返済を行う必要があります。
その時に返済するお金がなければ、
お金を新たに借りて返済する、ということになります。
返済の面でも、少人数私募債は自由度が高いです。
もしも、全額償還の期限が来ても残額を返済できない、
という財務状況であれば、その残額をもとに、
新たな少人数私募債を発行し、継続すればいいのです。
少人数私募債は、個人でも法人でも引受人になれます。
子会社が発行し、親会社が引受人となりお金を貸しつける、
ということも可能なのです。
多くのメリットがある少人数私募債は、
中小企業でもっと使われてもいい、資金調達方法なのです。
(古山喜章)

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