2.毎年老人になると遺言が変わる、気が変わる
ある社長が私におっしゃいました。
「先生、毎年毎年正月に私は遺言を書いているんです。
その遺言の中身が毎年毎年変わるんです。
自分でもおかしいなと思うほどものの考え方が毎年毎年,
老境に入っていくと、考え方が変わってくるんです。」
小学校、中学校、高校、大学の時の長男は、
すくすく育ってて、なかなかの男だと。
いい後継者だと思っていても、その男が30を超え、
40を超えてくると、急に自分のその息子が
「いや、ちょっと待ってよ。
弟の方が社長に向いてるんじゃないか。」
こうおっしゃるわけですね。
「自分の考え方が変わる。」
何も会社の相続だけじゃないです。
自分の残した不動産、自分が貯めた銀行預金、
上場会社の株式、お蔭様で人も羨むほどの、
自分も考えつかなかったような財産が手元に残っているんです。
これを誰に譲ろうか、
もちろん、半分は妻でしょうけども妻とても、
やがて私よりもしかしたら早く死ぬかもわからない。
私の残した財産は、基本的には自分の長男、長女、いや、孫たちに行くわけです。
ふとその時に,惜しくはないんですけども誰に渡そうかと言った時に急に感情で気が変わってくるのでしょう。
「なぜなんでしょうかね?」とおっしゃる老元社長もいらっしゃる。
この考え方は私も理解できるんです。
「こいつにやろう。いや、こっちの方がいいだろう。
いや、他の財団に寄付しようか。」
いろいろ自分の残した財産の行く末を誰に譲ろうか、
という考える時間があるので、迷う気持ちになるんです。
自分の人生を考えたら何の学歴もなく大した能力もなく、
人に誇れるような身体もなく、
親戚縁者の世話になったわけではなく、
今日迄自分の力で成功者と生きてきた。
星の瞬く間に家を出て、家へ帰ってくるときは、
もうすでにまた暗くなって、夜の8時、9時、
本当に深夜まで働き詰めで、
今日の厳しい経済環境の中で会社を興し引っ張ってきた。
しかし、このたくさんの財産を何の苦労もなく、
ヘラヘラヘラヘラ消費している女房や、
ヘラヘラしている娘の行動、
おじいちゃんと言って都合のいい時に寄ってくる孫たち。
これに全財産を渡すとなると、情けなくて仕方がない。
もう少し良い渡し方がないだろうか(?)。
気が変わるわけです。
年を取ると、本当に稼いだ財産を死守する気はないけれど、
どうせあの世に持っていけない。
分かっています。
分かっていても、それでは誰に渡すんだと言った時に、
目の前の女房や子供や孫に渡せるかというと、
渡せなくなる気持ちになる時があるのです。
要は年が取るほど、気が変わってしまうんです。
価値観が変わっていくんです。
あの人は賢明だ、社長だと言われても、
かつての社長、賢明な社長は、周りから見て、
あら、アホじゃねえかと言うように気が変わる。
経営コンサルタントとして会社継承にお手伝いした中で
多くのトラブルに会ってきた私が申しあげるのですが、
なぜこうも多く問題が継承如に発生するのでしょうか?
A社では二代目がしっかりとしているにもかかわらず、
外部で、大会社で働いていた二代目の兄弟を入社させ、
その人間に次期社長をさせると変更した。
B社では自分の兄弟を、
二代目から見ればオジさんを次期社長にしようとする。
C社では外部で働いていた実子を急に入社させ、
周りの幹部の了解なく社長職を譲る。
D社では女性幹部を妻として入籍し、その女性を次期社長にする。
E社では88歳になっても自社株は息子2人には譲らず、
特殊法人会社の所有にし、2人の息子に社長職を譲ろうとしない。
F社は、長年連れ添った妻と離婚し、85歳の年齢ながら再婚し相続でもめる。
まだまだ数えればいくらでもある。
この難儀な老元社長、本当に良き解決策がなく、私を困らせるのです。
(井上和弘)
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