損益分岐点売上高をどう見るか②
損益分岐点売上高は、損も益もない、
収支トントンの状態です。その計算式は、
固定費 ÷ 限界利益率 とされています。
しかし時折、次のようなお声を聞くのです。
「これで計算しても、その売上高ではお金が足らない」
「キャッシュベースで見たら、ちょっと違うように思います」
そうです。この計算式は、損益計算書の営業利益が
ゼロになる売上高を計算しているだけです。
実際の資金繰りとは、肌感覚が異なるのです。
②法人税が入っていない
ある経営者が言いました。
「わが社は毎年概ね5千万円程度の法人税を払ってます。
損益分岐点売上高の計算式には、法人税は加味されていないですよね。」
その会社は、無借入金だったので、返済や金利はありませんでした。
しかし、税引き前利益が出ていれば当然、法人税が発生します。
地方税も含めれば最終的に、税引き前利益の約40%と
見たほうが良いでしょう。
その金額が、その会社では約5千万円だったのです。
それも、この数年間は大きな金額差がなく発生していました。
そのため、
通常の計算式で損益分岐点売上高を計算しても、
その会社の経営者には、違和感があったのです。
なので、その会社では、
法人税の5千万円も固定費に組み入れて、
損益分岐点売上高を計算するとことにしたのです。
固定費 ÷ 限界利益率 の固定費に、5千万円も足して、
計算されたのです。
「これでようやくすっきりしました。」
と、その経営者は言いました。
その経営者にすれば、
営業利益がゼロとなる損益分岐点売上高がわかるより、
法人税が毎年と同じ5千万円発生して支払うには、
どの程度の売上高が必要なのか、を知りたかったのです。
その会社では今も、
自社の損益分岐点売上高を計算するのに、
法人税の5千万円を加味して計算されているのです。
それは、その経営者が資金繰りをチェックしていたから、
そうなったのです。
言い方を変えれば、貸借対照表がわかるから、そうなったのです。
損益計算書のみの考え方では、このような疑問が起こらないのです。
一般的な計算式に捉われることなく、
うちはこれも固定費だな、
というものは、加味して考えればよいのです。
(古山喜章)
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