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法務・総務

2023年5月19日 (金)

株式の譲渡承認請求書が届きました!⑤

「知らない弁護士から、株式の譲渡承認請求書が届きました!」

と、ある会社の社長から、慌てた声で電話連絡が入りました。

取り急ぎ、メールで送信してもらい、内容を見ました。

見ると、配達証明付きで会社代表者宛に送られていました。

 

⑤トラブル前に、取得条項を付けておきなさい

 

種類株式の「取得条項」を活用すれば、

意図せぬ株式の分散や、買取価格でのトラブルを、完全に回避できるのです。

実際に、分散防止に成功した会社もあるのです。

ただし、発行済みの株式に「取得条項」を付けるには、

いくつかのハードルがあります。

 

1)株主総会による特別決議

  

  種類株式の導入には、定款変更が必要です。

  定款変更は、株主総会における特別決議案件となります。

  そのため、

議決権の3分の2以上(66.7%以上)による決議が必要です。

  3分の2未満の議決権数では、第一関門である、

  定款変更ができないのです。

 

2)全株主の同意が必要

 

  発行済みの普通株式を「取得条項付き」種類株式に変えるには、 

  1)の特別決議に加えて、全株主の同意が法務局での登記に必要です。

  登記時には、株主総会の議事録と全株主の同意書を提出するのです。

  このハードルが高いです。

  株主が分散していて、ひとりでも同意しない株主がいれば、

  発行済みの普通株式を種類株式に変えることができず、

  「取得条項付き」にすることができないのです。

 

2つのハードルをクリアするには、

①議決権は3分の2以上を確保する。

②株主を分散させず、集約しておく。

ということが必要なのに加えて、

➂トラブル前に実行しておく。ことが必要です。

 

特に、全株主の同意について、

トラブルになってからでは、同意を得ることはできません。

不本意な株式譲渡や相続など、

意図しない者へ株式が渡ってしまう可能性があり得るのなら、

トラブル前の備えとして、該当する株主の同意を得て、

「取得条項付き」の種類株式に変えておきたいのです。

そうすれば、見知らぬ弁護士から、

譲渡承認請求が舞い込んでこようとも、慌てることはないのです。

何事も、備えあれば憂いなし、なのです。

 

(古山喜章)

2023年5月18日 (木)

株式の譲渡承認請求書が届きました!④

「知らない弁護士から、株式の譲渡承認請求書が届きました!」

と、ある会社の社長から、慌てた声で電話連絡が入りました。

取り急ぎ、メールで送信してもらい、内容を見ました。

見ると、配達証明付きで会社代表者宛に送られていました。

 

④取得条項付き種類株式の効果は絶大です

 

株式の譲渡承認請求書が届く・届かないに関わらず、

株式買取りでもめて裁判所に委ねられた場合、

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)方式で算定されます。

将来利益を見込んだ、超高い価格になります。

 

そのような事態を避ける方法は、

種類株式の「取得条項」という項目を、既存株式に付けておくことです。

この「取得条項」は、株式の分散防止を目的としたものです。

定款を変更して登記し、既存の発行普通株式に「取得条項」を付けるのです。

その時点で、その普通株式は種類株式に変わります。

 

「取得条項」を付ける場合、定款に例えばこう書きます。

“この種類株主に以下の事があった場合、会社はその株式を即座に買い取る”

とし、項目を列記します。

1)従業員・役員の地位を失った時

2)死亡したとき

3)逮捕された時

4)後見が開始された時

5)株式を第三者へ譲渡した時

6)株式の譲渡承認請求を行った時

これら記載事項に触れることが発覚した時点で、

株式は会社が買い取ることとなります。

 

その買取価格も、記載します。

“相続税法上の評価額で買い取る”と明確に書きます。

このように記載することで、

株式を買い取る評価方法でもめる余地がなくなります。

 

例えば、今回のような、譲渡承認請求が会社に届いた場合、

その文書を認識した時点で、

有無を言わさず、その株式を会社が買い取ることとなります。

買取価格も、相続税法所の評価額で決まりです。

もめることはありません。

 

つまり、種類株式の「取得条項」を活用すれば、

意図せぬ株式の分散や、買取価格でのトラブルを、

完全に回避できるのです。

実際に、分散防止に成功した会社もあるのです。

ただし、発行済みの株式に「取得条項」を付けるには、

いくつかのハードルがあります。

そのことについては、次回に触れさせていただきます。

 

(古山喜章)

2023年5月17日 (水)

株式の譲渡承認請求書が届きました!➂

「知らない弁護士から、株式の譲渡承認請求書が届きました!」

と、ある会社の社長から、慌てた声で電話連絡が入りました。

取り急ぎ、メールで送信してもらい、内容を見ました。

見ると、配達証明付きで会社代表者宛に送られていました。

 

➂裁判所が決める株価は超高額です

 

株式の譲渡承認請求書が届き、

その文書に書かれた売り先への譲渡に反対するなら、

2週間以内に返事を届ける必要があります。

ただし、その返事には、

別の売り先を示すか、会社が買い取るか、

のいずれかを明示する必要があります。

 

会社が買い取る、となった場合、

1株当たりの買い取り価格をいくらにするか、です。

仮に譲渡承認請求などない状態で、

会社が少数株主当人と相対で買取価格を決めるなら、

「額面の4倍で買い取りますがどうだろうか。」

といったざっくりした交渉も可能です。

 

しかし、弁護士を通じて譲渡承認請求書が届いた場合、

そのような買取価格の決め方は通用しません。

売るほうはできるだけ高く売りたいのです。

基本、時価評価です。

「彼は非同族だから、会社は配当還元方式で安く買えるはずなのに、

 時価評価で買い取るなんて納得ゆかない!」

といっても、あとの祭りなのです。

 

直近の決算書をもとに、時価評価を行うことになります。

土地、有価証券など、保有している資産を評価して算出します。

株主代理人の弁護士は通常、買取価格の10%程度を

成功報酬として受け取ります。

なので、関わる弁護士事務所も、

できるだけ高く売れるようにしたいのです。

決算書や資産の内訳明細を要求し、株価を算定するのです。

 

しかし、怖いのはその先です。

双方で株価を算定するものの、

買取価格の合意が得られない場合、

価格決定は裁判所に委ねられることになります。

 

裁判所は、DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)

という方法で株価を算定します。

恐ろしく高い株価になります。

現状の決算書をもとに、

「いまの収益状況が継続されたら、

7年後にはこれくらいの株価になるでしょう。」

といった、将来利益を見込んだ株価になってしまうのです。

マサカの坂の可能性など、考えてくれないのです。

裁判所に至ることなく、時価評価で買い取ることができれば、

まだまし、なレベルなのです。

 

では、このような弁護士からの譲渡承認請求書に

対抗する策はないのか、と言えば、あるのです。

それが、種類株式の『取得条項』なのです。

続く・・・。

 

(古山喜章)

2023年5月16日 (火)

株式の譲渡承認請求書が届きました!②

「知らない弁護士から、株式の譲渡承認請求書が届きました!」

と、ある会社の社長から、慌てた声で電話連絡が入りました。

取り急ぎ、メールで送信してもらい、内容を見ました。

見ると、配達証明付きで会社代表者宛に送られていました。

 

②取締役会の譲渡承認では、分散防止の効果なし

 

2006年の新会社法施行後、ほとんどの会社で、

定款に“株式の譲渡制限”の項目が記載されました。

“当社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を必要とする。”

といった内容の文言が書かれています。

ほとんどの経営者が、

“これでうちの株式が変なところに売られることはない。

 取締役会の承認が必要なのだから。

承認しなかったらそれで終わりだ。”

と思い込んでます。

 

この認識は、大きな誤りです。

取締役会の承認が必要でも、株主は他の人や法人に、

株式を売ることはできるのです。

それはなぜか。

会社法127条では、『株式譲渡自由の原則』として、

株式を売り渡す、という株主の権利を守る条文が定められています。

そのため、株主が会社に提示する株式譲渡承認請求の文書には、

“私は株式をこの相手に売りたい。

この売先がイヤなら、別の売り先を示すか、会社が買い取ってください。”

と書くことができるのです。

こうすることで、売先の相手が誰であれ、

『株式を売り渡す』という株主の権利は守られるのです。

 

つまり、会社側は、

“その売り先に株式を売るのは認めない。”とは言えるものの、

“相手が誰であろうと、あなたが株式を売ることは認めない。”

とは言えないのです。

売主である株主が提示する相手先がイヤなら、

他の売り先を提示するか、会社が買い取るか、

会社は売主に意思表示しなければならないのです。

それも、株式譲渡承認請求書が届いて2週間以内です。

だから、配達証明付きで送付してくるのです。

何も返事をしなければ、当初の売り先へ売ることを

会社側が認めたことになるのです。

 

会社側としては、

得体のしれない人物や法人に株式を持たれたくありません。

なので、ほとんどの場合、

“会社が買い取ります。”と株主に返事をすることになります。

しかし、ここで新たな問題が出てきます。

会社が買い取ります、とはいうものの、

その買取の株価をどうするのか、ということです。

一方的には決めれません。双方の合意が必要です。

紛糾すれば、とんでもない高額になることが、あるのです。

続く・・・。

 

(古山喜章)

2023年5月15日 (月)

株式の譲渡承認請求書が届きました!①

「知らない弁護士から、株式の譲渡承認請求書が届きました!」

と、ある会社の社長から、慌てた声で電話連絡が入りました。

取り急ぎ、メールで送信してもらい、内容を見ました。

見ると、配達証明付きで会社代表者宛に送られていました。

 

①非上場の株式買取請求ビジネスが動き始めています

 

株式の譲渡承認請求書、というのは、

“手元にある御社の株式を売り渡したいのですが、いいですか?”

と会社にお伺いをたてる文書です。

そこにはもちろん、売りたい先の個人名や法人名も記載します。

譲渡承認請求書は、株式を譲渡する際に必要な文書なのです。

今回のケースでは、

聞いたことのない法人名が売り先の名前として、書かれていました。

 

今回届いた譲渡承認請求書は、弁護士から届いたものです。

本来の株主がその弁護士に依頼し、株主の代理人として、

文書を配達証明付で送りつけてきたのです。

本来の株主は、創業家の親族でした。

それも、現代表とはこの数年、折り合いの悪い親族だったのです。

その株主は、会社の株価が上がってきていることを知っていました。

もっている株式は、15%ほどでした。

15%では、株主であってもたいしたことはできません。

いわゆる、少数株主です。

 

この数年、

『非上場会社の株式を高価で売却できますよ。』

と書籍や広告でセールスする弁護士事務所が増えてきたのです。

『どうにもできない塩漬けになっている株式はありませんか?』

といった感じです。

ここ十年ほどは、

“消費者金融への過払い金請求”や“残業代の未払い金請求”

で稼ぐ弁護士事務所が目立ちました。

しかし、そのような需要もなくなりつつあるなか、

新たなビジネスチャンスとして目を付けたのが、

少数株主へのアプローチなのです。

 

非上場の中小企業には、

10%前後かそれ以下の、少数株主が存在するケースが多いです。

そして、多くの場合、放置状態になっています。

しかも、非上場会社といえども、株価が驚くほど高い場合もあります。

そのことに気づいた弁護士事務所が、動き始めたのです。

今後、どんどん増えてくると思われます。

先に紹介した事例も、文書の送り主は、

少数株主ビジネスの書籍を出版している、弁護士事務所だったのです。

 

経営者サイドからすれば、迷惑な話しです。

「そのうちに本人と交渉して適当な値段で買い取ろうとしてたのに、

 弁護士が絡んで、やっかいな大事になってきました!」

といった案件が、私たちの周りでも、ポツポツと出てきているのです。

経営者を苦しめ、少数株主を加担する弁護士事務所は、

私たちからすれば、敵なのです。

 

この話しをすると、

「うちの定款には譲渡制限の項目がありますから、

 そんなことにはならないですよ。」

と言われる社長がいます。

が、その認識は大間違いです。

敵である弁護士事務所は、その法の穴を狙って動いているのです。

譲渡制限項目で阻止できるのなら、弁護士事務所はわざわざ、

商売として動こうとしません。

 

譲渡制限はなぜ役に立たないのか、どうすればいいのか、

といったことについて、書き進めてゆきます。

 

(古山喜章)

2023年3月24日 (金)

悩ましい株主はいませんか ➂

「実は、うちにはこんな株主がいて困っています。」

という相談を受けることが時々あります。

その多くは、先代からの負の遺産であったり、

やるべき処置を行っていなかった、というものです。

しかし、今の経営者や後継者にとっては、

悩ましい株主で、どうにかして解決したいのです。

 

➂株主不明の株があります(1)

 

ある社長から相談がありました。

「うちの株主名簿をみたら、株主不明の株があるんです。」

「不明?って、どういうことですか。」

「誰が持っているかわからない、という事みたいなんですが…。」

 

その社長は、先代から株式をじわじわと贈与され、

40%を持っておられました。

残りの60%は、先代の親族数名がお持ちでした。

その先代がお亡くなりになり、残りの60%をどうするか、

というタイミングで株主名簿を見たのです。

そのとき、“不明”と記載されていることに気づいたのです。

 

社長に聞きました。

「その“不明”というのは、何%あるんですか?」

「10%あります。」

「決算時に税務署へ提出する、同族判定の別表2には、

 どう記載されているんですか?」

「あ、どうでしょう?確認してみます。」

となり、確認したところ、“その他”と書かれていました。

「なるほど、それはよかったです。

 不明、なんて書かれていると、対応がやっかいですからね。」

 

もうひとつ、社長に確認しました。

「株主総会や配当は、これまでどうされてますか?」

「まったくやったことがないです。

 取締役会も、一度もやったことないです。

 議事録だけ、司法書士の先生にお願いして、作ってもらってます。」

やはり、というか、中小企業の法的意識は、

その程度のものなのです。

 

「社長、この件は他の誰かに相談しましたか?」

「いえ、誰にも相談しようがないので、してません。」

「じゃあ、この“不明”の株主がいる、

ということを知っているのは、どなたですか?」

「私と、総務の上田部長と、古山先生だけです。」

「会計事務所は?」

「担当も何度か変わっているし、

株主名簿なんて聞かれたことないので、知らないでしょうね。」

「ということは、知っているのは、

 上田部長を含めてわれわれ3人だけですね。」

「そういうことです。」

「わかりました。それならなんとかなりそうです。」

「そうですか。よろしくお願いいたします。」

となり、“不明”株主を抹消する動きに入ったのです。

続く…。

 

(古山喜章)

2023年3月22日 (水)

悩ましい株主はいませんか ②

「実は、うちにはこんな株主がいて困っています。」

という相談を受けることが時々あります。

その多くは、先代からの負の遺産であったり、

やるべき処置を行っていなかった、というものです。

しかし、今の経営者や後継者にとっては、

悩ましい株主で、どうにかして解決したいのです。

 

②すでに亡くなっている株主がいます(2)

 

10年以上前に退職し、すでに亡くなっている、

2名の元社員の株主をどう処理するのか。

顧問税理士は、

「相続人のところに申し入れて、

 会社で買いもどすように相談してください。」

というものの、そんなことをしたら、

株価を算定して高く買わねばならない、という危険があります。

 

その社長に聞きました。

「そもそも、その相続人の方は、

 自分の親が株式を持っていた、という認識あるんですか?」

「ない、でしょうね。

 あるなら、お二人とも亡くなって数年たっているのに、

 なんらか問い合わせがあるでしょうから。」

「株主総会の通知も何も、これまで送っていないんでしょう。」

「一度も送ったことないです。」

「配当は?」

「配当もしたことないです。」

「だったら相続人だけでなく、本人さえ忘れていたんじゃないですか?

 株主であることを認識する術が、何もないですからね。」

「そうなんですよ。たぶん、株主としての自覚がなかったと思います。」

 

株主としての扱いをまったくしていなかったのは、

よろしくないことではありますが、

この際でいえば、そのことが幸いしました。

社長に言いました。

「総務の幹部社員で、

 亡くなられたお二人の株を継いでくれそうな人、おりませんか?」

「まあ、いますけど、どうするんですか?」

「今のうちに、名簿の名前をその社員に変えておいてください。」

「そんなことして、いいんですか?」

「何がですか?」

「会社法上、問題になりませんか?」

「何を言ってるんですか。

 株主総会も何もやってこなかったことのほうが、

 問題じゃないですか?」

「いや、そう言われると、そうですね。

 正直、そのやり方で進めれるなら、助かります。

 でも、顧問会計事務所がなんと言うか。」

「多少何か言うかもしれませんが、結局、見過ごしますよ。」

「そうですかね。」

「だって、そもそもこのことを放置してきたのは、

 顧問会計事務所の責任でもあるんですから。」

 

となり、

亡くなられた少数株主の名前を現存の社員に変えたのです。

「このままだとまた同じことが起こるかもしれないので、

 半年ほど経過したら、会社がその社員から買いましょう。」

と、社長に申し上げました。

その後、その社員から会社が額面で株式を買い取り、

株主名簿から少数株主は消えたのです。

 

相続人からは当然の事、

顧問会計事務所からも、何も言ってきませんでした。

結局、多くの会計事務所は税金のことを見るだけで、

株主のことなど、まったく気にしていないのです。

杓子定規な法律にとらわれることなく、

可能な策で柔軟に対応すればよいのです。

変に事を荒立てる必要は、ないのです。

 

(古山喜章)

2023年3月20日 (月)

悩ましい株主はいませんか ①

「実は、うちにはこんな株主がいて困っています。」

という相談を受けることが時々あります。

その多くは、先代からの負の遺産であったり、

やるべき処置を行っていなかった、というものです。

しかし、今の経営者や後継者にとっては、

悩ましい株主で、どうにかして解決したいのです。

 

①すでに亡くなっている株主がいます(1)

 

ある経営者から、相談を受けました。

「うちの株主名簿には、

 すでに亡くなっている株主がいるんです。

 どうしたらいいいのか・・・。」

過去にも、別の会社で同じ相談が度々ありました。

 

「それは、おひとりですか?」お聞きしました。

「いえ、二人いるんです。元社員です。

 どちらも、会社設立時に株主が7人必要だったころの、

 いわゆる名義株主です。

 亡くなった先代に聞いた話では、お金は出していないそうです。」

これもまた、よくある話しです。

 

その経営者は続いて話しました。

「二人が退職した時に会社で買い取っておけばよかったのに、

 誰も気づかず忘れていて、そのままだったんです。

 で、お二人とも、退職後に10年以上経ってから、

 お亡くなりになりました。」

「どうして気づいたんですか?」

「そろそろ私の相続を考えないといけない時期になってきて、

 改めて株主名簿を見たときに、気づいたんです。

 その時にはもう、亡くなってました。」

「そうですか。ということはこれまで、

 株主総会の通知も出していなければ、配当もしていなかった、

 ということですか?」

「恥ずかしながら、そうなんです。

 それに、持っている株数はわずかなので、

決算書の別表2にも、記載していなかったんです。」

 

中小企業の多くは、株主総会はおろか、取締役会でさえ、

法律で定められたとおりに開催していません。

株主総会の招集通知を毎年、全株主に発送している会社なら、

すくなくともその時点で、

「この株主は退職したから買い戻さないと!」

となり、解決へと向かいます。トラブルには発展しないのです。

 

気になったのは、会計事務所の対応でした。

「顧問税理士事務所からは、何かアドバイスがありましたか?」

その経営者に尋ねました。

「それが、これを処理するには、

 “亡くなった方の相続人のところへ行って、

  会社で買い取らせてもらうよう、お願いしないといけないですねぇ。”

 て言うんです。」

「えぇ!そんなことしたら、それこそ寝た子を起こすだけじゃないですか!」

「そうなんですよ!

 そんな杓子定規なことしたら、やぶへびなだけだと思って、

 先生に相談させてもらったんです。」

 

その会社の株価は額面の10倍近くになっています。

亡くなられたお二人は非同族株主なので、

法的には会社は額面で買うことが可能です。

とはいうものの、先方の相続人が了承すればの話しです。

相続人に話しを持ちかければ、

「えっ、そうなんですか。一度株価を算定させてください。」

となるのは見えています。

 

「そんなアホなことしないで、別の方法で解決しましょう。」

ということになったのです。(続く…。)

 

(古山喜章)

2022年11月18日 (金)

たまには定款を見直しなさい⑤

事業承継の案件に関わる際は必ず、定款を確認します。

しかし、定款のメンテナンスは案外されておらず、

いつか作成して登記したまんま放置され、

全く改訂されていない、ということが多いのです。

しかし、

定款は会社の根幹を成す重要なエビデンス(証拠書類)です。

もう少しその内容に、敏感になってほしいのです。

 

⑤発行株式の種類をどう設計するか

 

中小企業のほとんどは、

普通株式のみを発行する定款になっています。

しかし株式には、普通株式以外の種類株式が、9種類あります。

そしてその9種類を組み合わせてひとつの種類株式とし、

定款に記載して登記することができるのです。

無議決権株式、配当優先株式、黄金株 等など、

その名称くらいはお聞きになったことがあろうかと思います。

 

特に事業承継において活用価値が高いのが、

「取得条項付き株式」という種類株式です。

相続や強引な譲渡による、株式の分散を防御する役割を果たします。

例えば娘婿が社長の場合、その娘婿は1株も株式を持っていない、

ということがあります。

本人は

「いつまでも、信頼されていないんですよ。」

というものの、先代の父親にしたら、

「いやぁ、株を渡して離婚したら、株を持ったままになりますから。」

という気持ちもわかるのです。

 

そのような場合、取得条項のついた株式を娘婿に譲渡します。

1)役員・従業員の立場を失ったとき

2)死亡したとき

など、いくつかの条件を設定し、そのようなことがあれば、

“即日にその株式は会社のものとなる”と定款に記載し登記するのです。

そうすることで、

仮に先代の不安が的中しても、株式が分散することはありません。

離婚して、その会社の社長を続けることはないはずです。

退任することになり、取得条項に基づき、株式は会社に移行するのです。

 

他にも、

兄弟で株式を保有するけれども、

弟は無議決権株式にして、議決権は社長である兄に集中させる。

など、様々な形で、その会社固有の事情に合わせ、

株式のありかたを設計することができます。

ただし、発行済みの普通株式を種類株式に転換するとなると、

株主総会での特別決議に加え、全株主の同意、が必要です。

株式が分散している程、種類株式活用へのハードルは上がるのです。

だから、株式を安易に分散させないでほしいのです。

 

定款での株式設計によって、事業承継をスムーズにし、

株式にかかる相続税をゼロにすることも可能なのです。

それくらい、定款というものは大きな存在なのです。

将来リスクを考慮した際に、

わが社ではどのような株式の設計にしておくべきか、

改めて考えてほしいのです。

 

(古山喜章)

2022年11月17日 (木)

たまには定款を見直しなさい④

事業承継の案件に関わる際は必ず、定款を確認します。

しかし、定款のメンテナンスは案外されておらず、

いつか作成して登記したまんま放置され、

全く改訂されていない、ということが多いのです。

しかし、

定款は会社の根幹を成す重要なエビデンス(証拠書類)です。

もう少しその内容に、敏感になってほしいのです。

 

④監査役を置かない

 

「うちの会社には監査役がいないんです。」

というケースがあります。

これは前回に述べた、取締役会を置かない会社、と連動します。

会社法上、

取締役会を置かない会社の場合、監査役を設ける必要がありません。

なので定款上、“取締役の人数は1名以上とする。”

と定めている会社、ということになります。

但し、取締役会はなくても、監査役を置くことはできます。

 

監査役が必要、となると、

中小企業の場合、多くは社長の母親や奥様など、

ごく身内の人物を選任しているケースが多いです。

が、そのほとんどは、実態を伴わない監査役です。

「そんな監査役なら、うちの会社には必要ないです。」

という会社や、子会社・別会社の場合、

監査役を置かない、とされているケースが多いです。

 

ただ、監査役を置く、というのは、

単に監査機能を求めるだけではない場合もあります。

親族を監査役に置き、月額10万や20万、報酬を出す。

そうして利益を分散させる。

あるいは当人に課税のない範囲で報酬を出す。

要は、お金を身内の財布にためてゆく、

という機能もあるのです。

 

ただしその場合、

監査役が全く何にもしていない、となると、

税務調査でつつかれることもあります。

「何にもしていないのに報酬を出すのは、損金として認めない。」

などという、半ば言いがかり的な指摘を受けるケースです。

せめて月に一度は、簡単な監査チェック報告書に署名・捺印をする、

などといった、エビデンス(証拠書類)を残してほしいのです。

 

グループ会社を含め、監査役を置くか置かないか、

ということも、各社の経営判断です。

定款次第でどちらも選択可能です。

自社にとって最適な策を選び、定款を整備してほしいのです。

 

(古山喜章)

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